+++ Indigo Waltz +++
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I have a pet dog.
an extra of "BODY&SOUL"



Q : 貴方にとって、“若頭”とは?
「征士だろ?」
Q : ・・・・・・。では、貴方にとって、“伊達征士”とは?
「従兄じゃん」
Q : ・・・・・・・・・・・。では、貴方にとって、“従兄”とは?
「う〜〜ん・・・。犬、かな」



舎弟君の脳裏





呼んだ?




「い・・・イヌ・・・・っすか・・・? 若が?」
図らずも、頭の中で愛らしい小型犬に小首を傾げて振り向かれ。
哲は一種のカルチャーショックにうろたえて次の一歩が出ず、シャツ越しに肩甲骨を浮かせた薄い背中に置いて行かれてしまった。
尊敬する、ちょっと・・・じゃなくかなり怖いオーラを纏った若頭と、ちまっ・・としたイヌの、あまりのイメージギャップに眩暈までしそうだ。
いや、これは正真正銘の眩暈だろ。
思って、哲は額に手をやった。
「?どした?」
顔だけ振り向けながら流し目をくれて、ショック状態の舎弟を見て取った当麻はくくっと笑う。
「いや、んな小っちェー犬じゃねーぞ?そりゃ」
まるで舎弟の頭の中を覗いたような、的確なお言葉。
「大型犬よ、モチロン。」
フイッとまた前を向いて歩き出しながら、お嬢はやけに楽しそうに従兄を語る。
緩やかな風が蒼い髪を涼しげにそよがせていく。
哲は半歩後ろをついて歩きながら、『大型犬っつってもなぁー‥‥』と納得いかなげに腹の中で呟いた。
ピロピロリン♪
携帯メールの着信を知らせる、軽快な電子音。
この音は、お嬢の携帯だ。
当麻は手にした携帯電話の液晶画面に目を落とし、慣れた手つきでメールを確認する。
文面をスクロールさせる様子から、短文メールではない事は哲にも分ったが、その表情は機嫌よさげに穏やかなまま。
歩くリズムも変わらないので、誰からのどんな連絡なのか、哲には全く見当もつかない。
辛うじて、話題の若頭ではない、という事が分かるのみだ。(彼は長文メールを打たない。というか、打てない。)
すぐにメールを読み終えて、ちょちょっ・・・とキーを操作する。
目にも留まらぬナンとやら。
今時の若者にも引けをとらない熟練技披露の後にパタンとそれを閉じると、お嬢は淀みなく“犬”の解説に戻った。
「凄ェ毛並みのいい、血統書付の超カッチョイイ奴。んで、俺に懐いてんの♪一緒に遊んで良し、連れて歩いて良し。超自慢な犬。」
イイ感じに色の抜けたデニムに包まれた、ひょろりと細長い足がのんびりとコンビニへの道を辿る。
今日は休日。
ちょっと真面目に机に向かって、おぉ、流石はガッコのセンセイ!と感心したら、早々に気分転換。
散歩と銘打ったコンビニ探訪──その実態は、新商品のお試し巡礼。
当麻の数多ある趣味の一つである。
「でも、ホントは豹なんだよねぇ〜」
犬だ犬だと言って解説までした舌の根も乾かないうちに、なんだか変な節付で、歌うように当麻が言う。
(んぁ?結局、どっちよ?犬なの?豹なの?)と混乱する舎弟に、「本人、犬のつもりな、豹。」ときっぱり。
どうやら彼の中には明確な従兄像があるらしい。
「俺、筋肉ダルマは嫌だけど征士の筋肉は好きなんだよな〜。凄ェキレイに付いてて、まさに豹!って感じじゃね?」
ライオンじゃぁ、なんか・・・たる〜んって感じがするだろ?な?
擬態語と一緒に両手と表情まで使って、怠惰なライオンを真似てみせる、お嬢の言いたいニュアンスは至極明確に舎弟にも伝わった。
「あ、筋肉ダルマはホントにいただけネェぞ。」
なぜに筋肉ダルマをこうも引っ張る・・・この人は。
「解剖、し難くてしょうがねぇのよ。ムダに重いし、切り難いし、内臓取り出し難いし。ガッって開いて出さないと出ないんだぜ?知ってる?」
「知りませんよ!!」
やめてよ!そんな話!!と、筋肉ダルマとまではいかないが大きな恵まれた体格をフルッと竦めて、なぜかちょっとオネェ言葉で哲は当麻を睨んだ。涙目で。
ははは・・・と、当麻は実に晴れやかに笑う。
間違いなく“サド”だ。
「・・・・で?犬のつもりな豹って、なんなんです?」
まだ警戒心たっぷりに、そそくさと話題を戻そうとした哲に、当麻は「あぁ・・・」と素直に従ってやった。
「犬のつもりでじゃれてんだけど、何かの拍子にこっちが凄ぇダメージ受けんの。爪もスゲェし、牙もデカイ訳よ。だってホントは豹だからさ。‥‥でも、本人全然悪気はない、と。ただ俺にじゃれてるだけなんだよな〜」
言われて、哲は数日前の事件を思い出す。
そう、あれは自分たちにとって立派な事件だった。
ぐったりと意識の無い、蒼白な顔のお嬢を若頭が横抱きに抱いて車から降りてきたのを見た時には、ザァッと音を立てて血の気がひいたものだ。
しかし、あの場合、若は‥‥ジャレタ‥‥のだろうか‥‥?
哲は暫し考え込む。
いやでも‥‥お嬢は“じゃれられた”と思っているらしい。
「でも、俺が『痛いッ!!』って怒ったら、その豹が見事にシュン‥‥ってヘコムのな。そんでしばら〜く浮上しねぇの」
凹んだ従兄を思い出しているのだろう、当麻は可笑しそうに、優しげに笑う。
可笑しそうに、優しげに──この時々目にする横顔を、哲は眩しそうに目を細めて見やった。
“凹んだ豹”こと、ナーバスになった若頭を浮上させる時の、当麻の表情。
哲の好きな、お嬢の表情の一つである。

若頭のイメージが豹だ、というのは哲も全面的に頷ける。
ジャガーでもレパードでも、タイガーでも・・・(値段で言うならジャガーか?)・・・まぁ、そのあたりのコワイ猛獣だ。
見た目は色素の薄い若頭だが、威圧感で言うなら黒豹なんじゃ・・・?、とも思う。
だが、きっと当麻にとってだけ、彼は愛すべき“犬”なんだろう。
‥‥それはいいとして、じゃぁ、お嬢は何なんだ?
疑問に満ちた目で、飄々と足をすすめる見た目優しげな美人の横顔をチラ見する。
油っけのないオキレイな横顔。
カッコはイイが男としてはどうなのか、と思うほどに華奢で、自分たち厳つい野郎どもはどうしても守ってやらなきゃと思ってしまう。
黙って・・・スマシテいれば、どう見ても人畜無害な草食動物系なのだが、どうしてどうして・・・、彼が完全な肉食動物である事を、哲は身をもって知っている。
やっぱネコ科の華奢な猛獣‥‥?・・・チーターとかかな・・・・?
舎弟は煩悶しながら、鼻歌混じりのお嬢の散歩に付き従って、木漏れ日の中を黙々と歩いた。


To be continued.


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