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I have a pet dog. 2

I have a pet dog. 2an extra of "BODY&SOUL"

そろそろ目指すコンビニエンスストアの全景が見えてきたか、という辺りで、今度は哲の携帯が鳴り始める。
この音は、メール着信ではなく電話だ。
哲は慌てて携帯を取り出し、チラッと見えたウィンドーに表示された相手の名前(“沢木補佐”!!)に尚更焦って回線を繋いだ。
「ハイッ、相原です!」
若頭からの電話を受けるのは勿論最高に緊張するが、幹部・・・しかも若頭補佐からの電話も、哲にとっては充分心臓に悪いのだ。
鯱ほこばる哲を尻目にくすっと笑って、当麻は変わらず足を進め・・たのだが、待って・・、とその哲に肘へ縋られた。
「・・・えぇ、一緒です。代わりますか?」
足取りを緩めたところへ、「補佐からです」と携帯を渡される。
「ん?んー・・・。はぁい?どした?」
こっちはこっちで、ここまで力を抜かなくても・・・という気負いの無さだ。
「・・・今?コンビニ行くとこ・・・ってか、もう着いた。」
確かに、着いた。
このまま携帯電話で喋りながら入店・・・という訳にもいかず、二人して店を目の前に立ち止まる。
「・・・えー?んな事言ったって・・・。年寄りの散歩じゃねぇんだから。」
どうやらすぐに戻って欲しい、と言われているらしい。
もともと低い声質で落ち着いた話し方をする沢木である。隣で聞き耳を立てても電話から声が漏れてくることはない。
哲は完全にお嬢の受け答えだけから推測を立てる。
「・・・あぁ?・・・・待て、ソレ俺のせーかよ?」
不満そうだ。非常に、不満そうだ。
「・・・・・・・・ハイハイ。買い物終わったらな。」
プッと余韻のヨの字も無く通話を切って、「アノヤロー・・・」とお嬢はガラ悪く呟く。
声も低い。
あの野郎って・・・どの野郎・・・?
訊いていいものかどうか、躊躇う哲であった。
「・・・手っ取り早く俺を使う手に出やがったな・・・?」
「・・なんか、あったんですか?」
どうやら沢木の事を言っているらしいと思いながら、遠慮がちに尋ねてみる。
ホイと携帯を返して踵を返し、店のドアを引き開ける当麻の後を追いながら、哲はプラスチックカゴを手に取った。
「征士の機嫌が、30度ぐらい斜めってんだってさ。」
何を基準にどう計った角度なのか。
沢木の言葉とは思えないので、お嬢の主観から弾き出された角度だろう。
「・・・・・いいんですか?すぐ戻んなくて」
チョコ菓子の新製品を真剣な顔で物色中のお嬢に、お伺いを立てる。
「オイオイ・・・30度だってば。アルコール度数じゃねぇんだから。チョビッと傾いただけだろ?」
「でも・・・30度の勾配って、ケッコウですよ?」
「・・・お前らなぁ・・・・」
誰かと一緒くたに、複数形で呆れられた。
「診断書、書いてやろうか?“心配症”って。」
ハゲるゾ。
冷たい目(このお方の目は澄んだ寒色なので、本当に冷たそうになる)で嫌に断定的に言われて、哲は医者に宣告されたような気分になる。
否、実際にお嬢は医者、なのだが。
コレ試すべ♪、とチョコレート菓子を二種類哲の持つカゴに入れて、当麻は急ぐでもなく店内を巡りはじめる。
荷役としては、とぼとぼとついて歩くしかない。
内心ハラハラとしながら。
自前の髪の将来も不安ではあるが、そんなことよりも。
暢気な当麻が心配なのだ。
機嫌の悪い若頭から端を発した大事件があったのは、つい先日だ。
血の気の多い人間が多数を占める組の面々でも、あんな事件はご免被る。いやもう、本当に。
「おっ、このパンも新しいんじゃん?」
ハスカップだって、流行ってんのかね?
食ってみよ♪とまたカゴへ追加。
・・・・・暢気すぎる・・・・と、哲は頭を抱えたくなった。
実際に抱えなかったのは、ひとえにカゴで手が塞がっていたから。ただそれだけだ。
「・・・・ジョー・・・」
情けない声と同じくらい情けなく下げた眉尻で、“血の色ミドリ”の呼び声高い当麻の仏心を擽ってみる。
・・・やっぱダメかな・・・?とは思ったのだったが。
辛うじて擽られてくれたのか、当麻は自分付きの舎弟を流し見て、フッと笑った。
仕方ないヤツ、と言いたげに。
「あのな、哲」
子供にでも話すような、ゆっくりと柔らかい口調。
「征士はウチの組で若頭はってんだぜ?」
「・・・・はい・・」
「親父さんに相談はするし、報告もしてるだろうけど、ほとんど組の事は征士が任されてる。・・・実質、組長代行だ」
こくこくと、哲は頷いて同意する。
「・・・・毎日色んな事があるだろうさ。」
俺には分かんネェけどな。
と続いた言葉には、素直に頷けなかった。
組の動きを本当にお嬢は一切関知していないのか、日頃から疑問に思っているからだ。
若頭は従弟に何も話さないのか、そこも一つ疑問があったし、何より組幹部─── 特にブレイン的な者たちは時々当麻に連絡を寄越す。
何の相談なのか?
ただのご機嫌伺いだとは思えないのだ。
伊達の中核である彼らは、絶対にヒマでは有り得ない。
飄々とドリンクコーナーへ移動するお嬢に従いながら、哲は自分がガードする蒼いヒトの底の知れなさを改めて思った。
「で、お仕事盛り沢山の組長代行が、毎日心穏やかに・・・ってそりゃ、ムリだろ?どう考えても。」
「・・・まぁ・・・そうですけど・・・・」
「確かに俺も、沢木には気を回せって言ったけど?・・・周り中がピリピリすんのもどうかと思うぜ?」
ヤツは怪獣か? お前ら・・ウルトラ警備隊か?!
楽しそうに笑って炭酸飲料の冷蔵庫前に屈んだ当麻の横へ、哲も一緒にしゃがみこむ。
「でも、ジョー・・・」
呼びかけに振り向けられた瞳に、心拍数が上がるのを自覚した。
「俺は、“一人ウルトラ警備隊”でもいいんじゃないかと思ってます」
いや、別に地球を守りたいワケじゃないですけど。
不思議そうな蒼い目が間近からジッと見つめてくるのに、うっわ俺しか映ってねぇ・・・と思うと余計に血が上る。
「あの、ですね・・・」
落ち着け落ち着け・・・落ち着け自分、と呪文のように腹の中で密かに唱えて、哲は頭の中の語彙に総動員の号令をかけた。
「若は・・・大丈夫だと思います、自分も。・・・補佐が心配して、ジョーも・・・心配するでしょ?俺なんかが心配することはないと思うんですけど・・・違うんです。俺が心配してんのは、ジョーですよ?」
うわ〜、告ってる。告ってるヨ、俺!・・・とパニクる一方で、ちゃんと伝わるだろうか?との心配で、哲の表情は真剣だ。
「この前のコトも有りますしね。・・・俺は若の舎弟で、ジョーはカタギですけど。そうなんですけど。俺は、実際のところ、ジョーの舎弟だと思ってるんで。」
伝われ伝われ・・・と目で訴える哲の、見ようによっては怖い顔に、お嬢はふっと表情を緩める。
「それ・・・ウチの組的にはマズくねぇ?」
くすくす笑い始めた当麻に、自称“ジョーの舎弟”も少し表情筋を緩めて、しかし真面目に「いぃえ、全然。」と即答した。
「若にも、9:1(キューイチ)でジョーに就けって言われてマス。」
ちょっとビックリ顔をしてみせた当麻に、哲は不思議な満足感を覚える。
そうなのだ。
初めにお嬢付きを仰せつかった時に、しっかりと心得を教えられているのだ。
ほぼ100%、当麻のために動け、と。
残りの1割でする事は、若頭への報告・連絡・相談。
『私の指示と当麻の利益が食い違った時に優先させるのは、当麻だ。絶対に、間違えるな。』
今でもしっかりと耳と脳ミソに焼き付いている若頭の言葉を、当麻にも聞かせる。
ヤクザの社会は擬似家族制度で成り立っている。
そんな中、親の指示は何があろうと絶対だ。そうでなければ制度の根幹が揺らぎかねない。
ジョーもよくご存知でしょうけど・・・・それでも若は、ジョーが優先だって、そう俺に仰ったんですよ。
・・・凄いでしょ?・・・と、哲は得意げだ。
『地元で滅多な事はない、と思うが。緊急に手が要る時は、お前の判断で組の人間を必要なだけ使って構わん。沢木も例外ではなく、な。』なぁんて渋い声で言われている事も、この際ついでに付け加えてみる。
俺、意外とチカラ有るんですよ?と笑った哲の額に、当麻は苦笑と共にデコピンをくれて、そのまま俯いた。
・・・・どうやら、照れているらしい。
「・・・サンキュ。・・・・イイ漢(オトコ)だな・・・俺の従兄・・・」
小さく呟かれた言葉に、哲は誇らしげに「はい。」と答えて。
「だから、早く帰りましょ。」
と続けた・・・・・。
「・・・・・・・・・・」
しっかりしゃがみこんで、しかもちょっと感動を噛み締めていた当麻は、言葉もなく柳眉を顰めて“自分の舎弟”の顔を探るようにゆっくりと見直した。
(・・・・天然か? それとも計算か?)
精悍と、言って言えなくもない顔が、にこにこと罪の無さそうな笑みを浮かべて、ね?・・・などと首を傾げている。
が、大きな男にそんな仕草は・・・全く似合っていない・・・。
「“だから”って・・・ナニ。なんでソコ、順接で繋ぐんだよ・・・?」
なんか、変ですか?
と尚も首の傾斜を増す哲の肩をとがった肘で押しやって、当麻は忌々しそうに舌打ちした。
「・・・お前なぁ・・・・!・・・・結局どっちの心配してんだ?!」
「そりゃぁ・・・両方です。」
パパとママ、どっちが好き?と訊かれた子供は、ほんの少し逡巡して、結局調子の良い返事を返す。
しかもにんまり笑顔のオマケまで付けられて、さっきの感動は遥か彼方。
当麻はやおら立ち上がると、悔し紛れなのだろう、ちょっと乱暴に冷蔵庫のアクリルドアを引き開けるとコーラの1500ミリリットルボトルを4本ほど、次々に哲の前に置かれた買い物カゴへブチ込んでいく。
「お前が持って帰れよッ。」
「ハイハイ」
にこにこしながら『しょーがないな〜』と返した二つ返事がまた当麻の睨みを喰らって、それでも“当麻の舎弟”は機嫌よくヒョイとカゴを持ち上げ、『さ、帰りましょ。』とレジへ向かい。
拗ねた当麻は舎弟の尻に蹴りを入れながら、その後に続いたのだった・・・。

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コンビニに、他の客は・・・いなかった模様(こら。

ところで、前回『1』でのお戯れにご回答いただき、ありがとうございました!
すんごく楽しかった!
やはりというか、なんというか。
若=豹であるときに関わらず、イツいかなるときもお嬢=オレ様!・・ということで。
あとは・・・“オレ様な(エラソウな)”豹のエサ。(ニヤニヤ