this page is...novel
Colorful Time 4

Colorful Time 4

月島からの帰路。
首都高速から中央道に乗り入れて国立・府中インターで一般道へ降りると、自分の中ではもう庭まで帰って来た様な安心感が満ちる。
助手席に恋人がいれば尚のこと。
これも、一人で生活していた豊島のマンションではあまり感じなかった気持ちだ。

インターから家までは10分足らずの距離だが、途中で少し回り道をして、大学通り沿いに最近できたデリへ寄る。
実は、家へ帰ってからの飲み直し用にワインを仕入れてあるのだ。
ダイエット流行の昨今、夜9時以降の食事が良くないことなど子供でも知っている。
その上ショーモデルを生業とするなら、食事の内容にもそれなりに気を遣うもの。
気を遣うあまり肉などは一切口にしないベジタリアンも多いと聞いたことがあるが。
当麻の辞書に摂生の文字はない。確かに必要がないほど“ガリ”ではあるが。
食事やアルコールに関して付き合いが良すぎる程に良い恋人は、垂れ気味の大きな目をキラキラさせてひたすら上機嫌である。
ワイン好きなくせに、フランスものの酸味のキツイものが苦手という、子供舌な当麻のためにちゃんとドイツものを選んだ。
「あまり高いものではないぞ」
無邪気に喜ぶ恋人に過度な期待を持たせないよう釘をさしてみたのだが。
「わーぃ、飲みだぁ!」
膝の上で猫にまで万歳させて素直に喜びを表されると、悪い気などするわけが無い。
いつの間にかすっかり感化され、同じテンションで浮かれている自分に気づく。
気づきながら、己の高揚が止められない。
だが、押える必要があるだろうか?
当麻が、傍らにいるのに。

明るいショーケースの中に並べられた、色とりどりのサラダやキッシュ。
量り売りなのを良いことに、二人で相談しながらあれもこれもと少量ずつ注文するのがまた楽しい。

二人で摘まむワインのアテにしては意外なほど大きくなったパッケージを受け取って、駐車場の車へ戻った。
ドアを開けると同時に飛びついて来た猫を、当麻は「お待たせ〜♪」と調子よく宥める。
自分だけ車中へ置いて行かれた事に不満げな猫に、「何だよ〜、ちょっと買い物して来ただけじゃん」などと諭しているが、なかなか猫の機嫌は上向かない。
さもありなん。
私が猫でも、納得しないだろう。この長期留守番の後では。
ちょっと猫を気の毒に思いながら、車を出した。

この後は、一緒に家へ帰って、シャワーでも使ってから一緒に飲みなおして、一緒に眠ればいい。
眠って、起きて。
朝が来ても、一緒だ。
明日も。明後日も。その次も、またその次も。
ただそれだけの事が、嬉しくて仕方ない。
幼いころの、楽しい放課後が延々と続くような嬉しさに似ている。
似てはいるが、もういい大人なので、下校を促す放送に気分を削がれる事もなく。
夕食の時間だと親に帰宅を促されることもない。
もういい大人なのに・・・・こんなにただ楽しくていいのだろうか、とふと思ったその時に。
「・・・・終わりが無いのがイイよな」
助手席の恋人が、ポン、と言った。
・・・不思議なことに、同じ事を考えていたらしい。
驚いて視線を流すと、ひどく穏やかに笑んだ蒼い瞳があって、思わず目を細めてしまう。
「あぁ・・・。イイな」
一も二もなく同意して、緩んだ顔をフロントガラスへ向けた。

そう。
私ももういい大人なので、自分の力で、誰にも邪魔させずに継続させることができるのだ。

終わりが無いのが、イイ。

novel   next